Rengedouji1’s diary

グローバル・サプライチェーンをトレースするため、英字紙を(ひたすら)和訳し、サマリーします!

FMC:海運会社に記録的な金額(!)の返還を命令、コロナ禍での不当料金で

★著作権保護の観点から記事内容の取扱いにご注意賜りますようお願い申し上げます。

 

英ロードスター誌:2026年4月29日付け記事

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【記事のポイント】

1.FMCによる過去最高額「約$4560万ドル」の賠償命令

(a) 米国連邦海事委員会(FMC)は、香港船社「OOCL」に対し、経営破綻した 「Bed, Bath, and Beyond社」(現「DK Butterfly-1」)へ約$4560万ドル(約70億円超)を支払うよう命じた。

→ FMC史上最大規模の損害賠償額となるもの。

(b) コロナ禍における不当な追加料金(D&D)や、契約上の最低保証数量(MQC)を守らなかったこと、さらには荷主への「報復行為」が事実として認定された。

2.主要船社への相次ぐ追及と規制強化

(a) この動きは「OOCL」一社に留まるものではない。

(b) FMCは「HMM」($1600万ドルの賠償)や「BAL Container Lines」などにも厳しい処分を下している。

→ 他にも「ONE」や「YML」MSC」なども同様の「コロナ禍の混乱に乗じた不当搾取」で提訴されている。

(c) 海運業界全体で横行していたとされる商業慣行に対し、規制当局が極めて強い姿勢でメスを入れている。

3.荷主が直面する「高額な訴訟コスト」という壁

(a) 今回の勝訴は他の荷主にとって「希望の光」となるものだが、現実的な課題も浮き彫りになっている。

(b) 海運会社を訴えるには法外な弁護士費用がかかるため、中小の荷主にとっては「取り戻せる金額より訴訟費用の方が高い」という逆転現象が起きている状況。

(c) 船社側もこの「コストの壁」や「2年の時効」を逆手に取り、逃げ切りを図る戦略を公然と取っているという実態が指摘されている。

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【記事の詳細】

1.米国連邦海事委員会(FMC)は、破産した荷主「Bed, Bath, and Beyond社(BB&B)」の管財人に対し、過去最高額となる賠償金支払いの決定を下した。

→ 「OOCL」のコロナ禍時の業務慣行に関する3年間の審議を受けたもの。

 

2.「DK Butterfly-1(旧Bed, Bath, and Beyond社)」(*)が(当初の)$1.65億ドルを超える賠償金を求めた試みは却下された可能性もある。

→ だが、本件の規制当局(FMC)は管財人の主張を認め、この中国船社(原文まま)「OOCL」に$4500万ドルを超える賠償金の支払いを命じた。

(*)「DK Butterfly-1」

・ 経営破綻した米小売大手「Bed, Bath, and Beyond社」の現在の名称(管財人組織)のこと。

・ 「Bed, Bath, and Beyond社(BB&B)」は2023年に連邦破産法第11条(チャプター11)を申請し、破産手続きの過程で社名を「DK Butterfly-1, Inc.」に変更した。

・ 現在は、残った資産の管理や、今回のような損害賠償訴訟を担当する「清算組織(管理者)」としてこの名前が使われている。

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3.FMCのコメント。

(a)「OOCL」のより高額な請求に対する異議は「正当な理由がある」。

(b)  総額$45,600,599.25ドルの賠償金は、当該船社のサービスが「サービス契約に準拠していない、または取引を拒否した」ことを根拠としている。

 

4.FMC史上において最大唯一の損害賠償額となった今回の判決について。

(a) コンテナ船社による「報復行為」の事実認定も含まれている。

(b) この規制当局(FMC)が、管財人「DK Butterfly-1, Inc.」の他の請求を「どのような視点で見ているのか?」に関して、そのことを示す何らかの手がかりとなるのかも知れない。

 

5.FMCはまた、多くの船社が米国海事法に違反したとして、以下の船社を告発している。

(a)「BAL Container Lines」に対して$950万ドル。

(b)EMC」に対して$125万ドル。

(c)HMM」に対して$1600万ドル。

→ さらに「MSC」と「YML」に対しても損害賠償請求を行った。

 

6.いずれの事例においても、既視感を覚えるのは事実だ。

→ その苦情の申し立ては「コロナ禍での混乱に乗じようとする船社が、同様の行為をしている」と主張しているからだ。

 

7.管財人「DK Butterfly-1, Inc.」による最初の訴状。

→「OOCL」が「コロナ禍の期間に、コンテナ輸送における価格インフレを利用し、顧客を不当かつ不合理に搾取した」と非難している。

 

8.その管財人「DK Butterfly-1, Inc.」の主張。

(a) 当該船社「OOCL」が(サービス契約「SC」の)最低保証数量(MQC:Minimum Quantity Commitments)を4分の1超も満たしていなかった。

→ これは当時、各船社の間で広く行われていた慣行だった。

(b) その結果、「Bed, Bath, and Beyond社(BB&B)」は本船スペースを確保するために$900万ドルの支払いをせざるを得なくなった。

→ さらには、「OOCL」のディテンション&デマレージ(D&D)請求ポリシーによって更なる損害を被ることになった。

(c) つまり、当該船社OOCL」は、この家具荷主「Bed, Bath, and Beyond社(BB&B)」のコンテナ貨物引き取りの収容キャパシティを(意図的に)妨害した――、このように言われている。

 

9.今回の「DK Butterfly-1, Inc.」の成功事例は、FMC(連邦海事委員会)を通じて訴訟を起こす努力が報われるという希望を与える可能性が高い。

(a)「Cornerstone Brands社」と「QVC社」は「ONE」社に対して$1810万ドルの賠償を求めている。

(b)「YML」はMQC(最低保証数量)の未達に起因する形で、ディスカウント小売業者「Dollar General社」から$1470万ドルの訴訟を起こされている。

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10.業界関係者の話。

(a)「リスクと報酬」という観点から言うと、この問題は、船社サイドのかなりの部分で思い通りになる性質がある。

(b)  顧客サイドとしてみると、賠償請求を提起するため「法外に高額な」コストに直面するからだ。

 

11.業界関係者の話。(その2)

(a) コロナ禍のくだらない訴訟で5千ドルを取り戻すために、$2万ドルの弁護士費用を費やすつもりの人などいないだろう。

(b) 船社サイドの方は「自分たちが支払う必要のある額を減らすため、2年間の時効が過ぎるのをじっと待っているだけ」ということを(本音として)極めて率直に認めている。

【写真引用元:THE LOADSTAR 2026年4月29日付け記事】

★ 米国連邦海事委員会(FMC)が下した今回の裁定は、「海事&物流業界」にとって、まさに「激震」とも言えるインパクトを与えるものかも知れません。

★ コロナ禍の混乱期、荷主が悲鳴を上げていた「不当な追加料金」や「サービス契約(SC)無視」に対し、規制当局(FMC)が過去最高額の賠償命令という形で明確な「NO」を突きつけた格好です。

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★ 記事にあるよう、FMCは、香港の海運大手 「OOCL」 に対し、経営破綻した小売大手「 Bed, Bath, and Beyond社(現:DK Butterfly-1)」へ約$4560万ドル(約70億円以上)の賠償金を支払うよう命じました。

(1)なぜこれほどの高額になったのか?

★ 主な理由は、コロナ禍における「OOCL」の「やりたい放題」とも取れる業務慣行と言わざるを得ないと思います。

① 契約不履行(MQC未達)

★ 同社は、サービス契約(SC)で定められた最低保証数量(MQC)の4分の1以上を無視しました。

★ 荷主は本船スペース確保のために (ブッキング依頼をしても断られ続けた挙句)追加で$900万ドルを支払う羽目に陥ってしまいました。

② 不当なD&D(ディテンション&デマレージ)料金

★ 荷主側がCYからコンテナを引き取れない状況 (「引取り希望の実入りコンテナだが、ヤード内で大量に積み上がったコンテナの山の遥か下の段にあるので取り出せない」といった言い訳) を意図的に作り出した疑いがあるとされています。

★ その上で高額な料金(D&D)を課した訳です。

③ 報復行為の認定

★ 今回の判決で特筆すべきは、米国海事法が定める「禁止行為」のうち、船社による「報復的な振る舞い」が事実認定された点ではないかと思われます。

★ これはFMCが今後、他の訴訟に対しても厳しい姿勢で臨むシグナルとなることが予想されます。

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(2)「DK Butterfly-1」とは?

★ 今回の記事に登場する「DK Butterfly-1, Inc.」とは聞き慣れない名前ですが、2023年に倒産した「Bed Bath & Beyond社(BB&B)」の現在の姿です。

★ 仄聞するところでは、現在は事業を行っておらず、「残された資産の管理」や「今回のような損害賠償訴訟」を通じて「債権者への分配金」を回収するための組織(管財人)として機能しているようです。

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★ 今回の件は氷山の一角に過ぎないのかも知れません。

★ 一方で、FMCは他の主要船社に対しても、同様の海事法違反で矢継ぎ早にメスを入れている模様です。

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(3)業界の「本音」と今後の展望
★ 記事の後半でレポートされている業界関係者のコメントには、非常に現実的でシビアな側面が映し出されていると感じました。
★ 特に「$5千ドルのために$2万ドルの弁護士費用を払う人はいない」がそれです。(記事の詳細:11項(a))
① リスクとコストの壁
★ 大手企業(或いはBB&B社の管財人組織)であれば数千万ドルのために戦えると思います。
★ 一方、中小の荷主にとって、巨大船社を相手に海事法で訴訟を起こすコストは「割に合わない」のが実情ではないでしょうか。
② 時効待ち作戦
★ 船社側は、「訴訟コストを理由に荷主が諦める」ことや2年間の時効が成立して逃げ切ることを狙っている」という、極めてドライな戦略を(自ら)認めている点も興味深い(そして皮肉な)ポイントではないかとの印象です。
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★ ともあれ、 今回の「OOCL」への命令は、「混乱に乗じた不当な搾取は、数年越しにでも必ず高くつく」という強力な前例を作ったとの理解です。
★ 他の荷主たちにとっても、FMCを通じて声を上げる「希望の光」となる一方で、法務コストという現実的な壁が依然として立ちはだかっている――、これもまた厳しい現実ではないかと感じました。
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★ 今後は、「ONE」や「YML」などの判決がどう下るかに注目が集まると思われます。
★ その判決内容によって、海運業界の契約の在り方が根本から見直される転換点もあり得るのかも知れません。
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★ 最後になりましたが、この記事は「海運実務の現場」を知る人間からすると、最も重要な「なぜそれが不当なのか?」というメカニズムの解説が(明らかに)不足していると思います。
★ 特にMQC(最低保証数量)の相互義務や、CY(コンテナヤード)での「物理的な引き取り不能状態」を逆手に取ったD&D請求は、当時の現場を知らない「部外者」にとっては、単なる事務的なミスに見えてしまう恐れがあります。
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★  実務関係者が社内やステークホルダーと「事の重大さ」を共有するための、補足情報を網羅したマトリックスを作成しました。ご参考まで
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(A)「本船スペース提供」は義務

★ 米国のサービス契約(SC)において、MQCは荷主側だけの義務(罰金)ではなく、船社側にとっても「そのスペースを確保する法的義務」を伴います。

★ コロナ禍では「本船がない」「スペースがない」という言葉が免罪符のように使われましたが、FMCはそれを「高値で売るための意図的な拒絶」であったと見抜いた格好です。

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(B)ヤードの「言い訳」を封じる

★ 「コンテナが山の下にあるから出せない」という現場の混乱を、船社が「不可抗力」として片付けるべきではないということです。

★ 「それなら料金を取るべきではない」という極めてシンプルな原則(インセンティブ原理)をFMCが再定義した点が、今回の判決の画期的な部分ではないかと思います。

★  このように、物理的に取り出せない「デッドスタック」状態でも料金を課していたことが、今回の問題の核心になる筈です。

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(C)COSCOのリスク

★ 「OOCL」がこれほど高額な賠償を命じられた以上、共通のビジネスモデルを持つ親会社「COSCO」が「知らぬ存ぜぬ」で通すのは難しくなっているのではないかと思われます。

★ 特に米国路線のシェアを考えると、次にターゲットになるのは必至――、そのように考える次第です。

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★ このマトリックスを共有することで、なぜこのニュースが単なる「遅延問題」ではなく、海運業界の根幹を揺るがす「不正行為への断罪」なのか?――、専門外の方にも明確に伝わることを願う次第です。

 

以上

 
 

 

 

 

 

荷主はプレミアム料金に満足?!:「CMA CGM」スエズ通航を倍増

★著作権保護の観点から記事内容の取扱いにご注意賜りますようお願い申し上げます。

 

英ロードスター誌:2026年4月28日付け記事

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【記事のポイント】

1.「CMA CGM」のスエズ運河回帰と大幅な時間短縮

(a) 仏船社「CMA CGM」は、日本・中国およびインドと欧州を結ぶ主要航路(OCRおよびEPICサービス)を、従来の喜望峰迂回ルートからスエズ運河経由へと切り替える

(b) これに伴い、往復の航海日数を約2週間短縮することが可能となった。

→ 同社は、物流の効率化を大幅に高めている状況。

2.荷主の「スピード優先」姿勢と新たな「運賃競争」

(a) 紅海情勢のリスクは残るものの、多くの荷主は輸送時間の短縮を求め、通常より高い「プレミアム料金」の支払いを容認しつつある。

(b) この動きは「高止まりするコストに悩む他社に対しても、スエズ運河への早期復帰を促すトリガーとなる」可能性がある。

→ 海運業界に新たな運賃競争の局面をもたらすと見られている。

3.中国勢の躍進と制裁による勢力図の変化

(a) 米国政府による対イラン制裁の影響で撤退を余儀なくされた「シーリード・シッピング」の空白を埋める形で、中国の「CULines」や、同じく中国の「中谷物流」が紅海航路での存在感を強めている

(b) 特に中国〜紅海を結ぶサービスを「レギュラー週次便へアップグレード」するなど、地政学的な変化を商機と捉えた中国系船社の積極的な拡大姿勢が目立っている。

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【記事の詳細】

1.「CMA CGM」は、スエズ運河経由の輸送便数を倍増させている。

→ 複数の荷主が、紅海への貨物輸送にプレミアム料金を支払う覚悟でいるからだ。

 

2.仏船社「CMA CGM」の新サービス(以下の通り)は、喜望峰を迂回するルートに代わる形で、今週からスエズ運河を経由するルートで運航される予定だ。

① 日本および中国南部を北欧州とダイレクトに結ぶアジア~北欧州航路(OCR)

② インド亜大陸~北欧州航路(EPIC)

→ 4/03(金)配信:「【ご参考情報】「CMA CGM」の単独運航:日本~北欧州航路サービス開始、事業目標を強化」

 

3.先ず、OCRサービス(オーシャン・ライズ・サービス)の方だが、4月2日(木)に開始される。

→ 輸送ルートをスエズに移すことで、「CMA CGM」が、遥かに長い喜望峰ルートと比較して、往復航の寄港ローテーションを2週間短縮できるようになる。

 

4.その改訂されたOCRサービスの運航ローテーションについて。

(a) 現段階でサウジアラビア「JEDDAH港」への寄港が含まれている。

(b) 84日での折り返しで、8,400TEU型~10,000TEU型の本船x12隻が投入される予定だ。

→ これは、喜望峰航路で本船x14隻を使用していた96日とは対照的なスキームだ。

(c) 当該サービス第1号となる西回りスエズ運河通航は、8,488TEU型本船「CMA CGM TOSCA」で、木曜日(4/30)に予定されている。

 

5.他方、EPICサービス(Europe Pakistan India Consortium「欧州・パキスタン・インド共同運航サービス(仮称)」について。

(a) 西回りスエズ通航サービスは、明日(4/29(水))から11,388TEU型本船「CMA CGM GEMINI」で開始される予定だ。

(b) 但し、東回りサービスは、まだ喜望峰ルートを取ることになるだろう。

 

6.その改訂されたEPICサービスは「MUNDRA」「NHAVA SHEVA」「COLOMB」「JEDDAH」「PORT SIDE」「TANGER」「MED」「SOUTHAMPTON」「ROTTERDAM」「HUMBRUG」「ANTWERP」「LE HAVRE」「ALGECIRAS」、そして「MUNDRA」の順で寄港する。

→ また、ホルムズ海峡が封鎖されているため「ABU DHABI」「JEBEL ALI」「SOHAR」への寄港は一時的に除外される

 

7.シンガポールの海事コンサル:Linerlytica社の分析。

(a) 燃油代と傭船料が高止まりしている。

(b) コスト削減は勿論のこと、実入りのいい紅海貨物の輸送チャンスが、競合他社にスエズ運河への早期復帰の再考を促すトリガーとなっている。

→ 新たな運賃競争のステージが幕開けとなる可能性がある。

www.linerlytica.com

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8.中国企業も、紅海におけるプレミアム収入で儲けるべく、動き出している。

→ 中国の域内海運オペレーター「チャイナ・ユナイテッド・ラインズ(CULines)」だ。

(a) 同社は、かつての域内一強だったシーリード・シッピング(SeaLead Shipping)が手放した本船を、次々と引き取っている

(b) その「シーリード・シッピング(SeaLead Shipping)」は、「イラン当局者アリ・シャムハニ(元イラン国家安全保障最高評議会(SNSC)書記)に関係する本船に対する米国の制裁措置」によってペナルティ対象となっている。

 

9.その「CULines」は、同じ中国のZhonggu Logistics社(中谷物流)と提携する予定だ。

(a) Zhonggu Logistics(中谷物流)は、5月から「China Red Sea Express(CRX)サービス」を「上海」「寧波」「南沙」「JEDDAH」「AQABA」「SOKHNA」、そして「上海」に寄港する「レギュラー週次便サービスをアップグレードする」。

(b)「CULines」の方は「本船プロバイダー」として参画する。

 

10.この「CRXサービス」は、1,700TEU型~2,500TEU型本船x10隻を使って、56日の折り返し運航で開始される予定だ。

(a) Zhonggu Logistics社(中谷物流)は昨年10月にこのサービスを開始し、当初は本船x3隻で不定期運航を行っていた。

(b) その後、貨物需要を満たすべく、より多くの本船を投入。

→ サービス内容を徐々にアップグレードしてきた。

(c)「CULines」は、Zhonggu Logistics社(中谷物流)の2,518TEU型コンテナ船「ZHONG GU ZHU HAI」を運航し、日曜日(5/03)に青島に臨時寄港する。

(d) さらに、 「CULines」  は「シーリード・シッピング(SeaLead Shipping)」が保有していたチャーター船を引き継ぎ、この「CRXサービス」に加わる予定だ。

 

11.「CULines」は、今後数週間以内に「シーリード・シッピング(SeaLead Shipping)」の本船を少なくともx3隻引き継ぐ予定だ。

(a) 同社は、「シーリード・シッピング(SeaLead Shipping)」の撤退によって生じた空白を埋めるため、港湾オペレーター「Gulftainer社(本社:UAE)」の定航船運航部門「GT Lines」と協業する。

(b) また、中国~「KOHR FAKKAN」を結ぶ新サービスを2つ追加する。

 

12.金曜日(4/24)時点で、「上海」~「ペルシャ湾」の運賃は、4月17日(金)のTEU当たり$4031ドルから$3951ドルへと、若干の調整が入った。

→ 但し、この運賃は1月のTEU当たり$1288ドルと比べると、依然として大幅に高止まりのレベルだ。

【写真引用元:THE LOADSTAR 2026年4月28日付け記事】

★ 紅海情勢のリスクが依然として残る中、輸送時間の短縮を最優先する荷主のニーズと、それに応える船社サイドの戦略が鮮明になっています。

(1)「CMA CGM」の戦略:スエズ運河ルートへの大胆な回帰

★ フランスの大手船社「CMA CGM」は、喜望峰迂回ルートからスエズ運河経由へと、主要航路の舵を切り直しています。

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(2)背景:荷主の「プレミアム料金」容認とマーケットの期待

★ Linerlytica社は、「燃油代や傭船料が高止まりする中、スエズ運河への早期復帰は、船社にとってコスト削減』+『高単価な紅海貨物の獲得』という二重のメリットがある」としています。

★ 「実入りのいい紅海貨物」の輸送チャンスを逃すまいとする動きが、競合他社に対してもスエズ復帰を再考させるトリガーとなり、新たな運賃競争の引き金になる可能性があると思われます。

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(3)中国勢の台頭と「シーリード・シッピング」の失速

★ 「CMA CGM」の動きに呼応するように、中国船社も紅海でのシェア拡大を狙っている模様です。

①「CULines」と「中谷物流(Zhonggu Logistics)」の提携

・5月から「CRX(China Red Sea Express)サービス」を週次定期便にアップグレード。

・1,700〜2,500TEU型本船x10隻を投入して、「上海」「寧波」「南沙」と「JEDDAH」「AQABA」「SOKHNA」を連結。

②「シーリード・シッピング(SeaLead Shipping)」のペナルティ

・イラン当局者に関係する本船への米国による制裁措置を受け、マーケットから後退。

・「CULines」がその空白を埋める形で、少なくとも「SeaLead Shipping」の傭船x3隻を引き継ぎ、UAEの「Gulftainer社(GT Lines)」とも協力して新サービスを展開。

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(4) 運賃マーケットの現状

★ 2026年4月時点の「上海」〜「ペルシャ湾」航路の運賃(SCFIベース)は以下の通りです。(記事の詳細:12項)

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★ 「CMA CGM」がスエズ運河通航を倍増させたことは、海運業界における「リスク管理」から「効率・収益重視」へのシフトを象徴する事象として捉えることが出来そうです。

★ 荷主サイドが「高くても早い」ルートを支持する限り、今後は他船社も追随し、スエズ経由の便数がさらに増加する可能性が高いと思われます。

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★ 一方、船社サイドとしても、コスト効率の追求」の観点からメリットを感じていると思われます。

★ 実際、フリート規模をx14(迂回時)からx12隻へ削減することで、高止まりする燃油代や傭船料の圧縮を狙うことが可能になるからです。(記事の詳細:4項)

★ ともあれ、複数の荷主から「輸送日数の短縮を最優先」し、且つ「紅海リスクに伴う『プレミアム料金』の支払いを容認」する動きが出ていることは注目されます。

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★ 最後に「CMA CGM』の「OCRサービス』と「EPICサービス』の航路マップを貼付しました。

★ 特に「OCRサービス」、即ち「日本出し欧州向け直行サービス」がスエズ運河を経由して日本と欧州を直結することは、日本企業へのインパクトは大なるものがあると思われます。ご参考まで

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以上

 

 

 

 

 

 

イラン紛争:数千マイル離れたアジアと米国の海上輸送費が急騰。理由は以下の通り。

★著作権保護の観点から記事内容の取扱いにご注意賜りますようお願い申し上げます。

 

米FreightWaves誌:2026年4月27日付け記事

www.freightwaves.com

◆ ホルムズ海峡の膠着状態で、海上運賃が僅か1ヶ月で2桁上昇。

 

【記事のポイント】

1.中東紛争によるアジア・米国航路への波及

(a) ホルムズ海峡の緊張とイランを巡る紛争の影響に伴い、直接の紛争地域ではない「アジア〜米国」間の海上運賃が1ヶ月で約2割急騰した。

(b) 東南アジアのハブ港における「混雑」や「ボトルネック」が連鎖(カスケード)的に波及している。

 

2.世界規模での船腹再編と大西洋航路の急増

(a) イラン紛争を回避するための航路変更に伴い、各船社が世界規模でサービス網を組み替えている。

(b) 結果、大西洋航路(北欧州〜米国東岸)の運賃が前月比で+46%も急騰している。

→ 地域限定から世界規模へと影響が拡大している。

 

3.「高止まり」への警鐘と船会社の管理

(a) 一部の欧州向け航路で運賃が軟化しているものの、ノルウェーの国際物流コンサルXeneta社:Sand主任アナリストはこれを「正常化」とは見ていない。

(b) 同アナリストは、本船の安全が保障されない限り、「輸送時間の長期化」や「船社による意図的な船腹削減(供給管理)」により、運賃は危機以前よりも高いレベルで推移し続けると予測。

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【記事の詳細】

1.太平洋航路の海上輸送ベンチマークとなるスポット運賃は、過去1ヶ月間で2桁の上昇を記録した。

→ 中東紛争の影響は、地球の反対側まで流れ下ってきている。

 

2.ノルウェーの海運プラットフォーム:Xeneta社のPeter Sand主任アナリストは、同社の最新ニュースの中で次のように述べている。

(a) 極東出し米国向けサービスにおいて、運賃は依然として1ヶ月前よりも高止まりしている。

→ 中東情勢の混乱が、東南アジアの積替えハブに次々と波及し続けているからだ。

(b) これらのハブを経由して米国へ貨物を輸送している荷主は、数千マイル離れて発生したボトルネックの代償を払っている状況だ。

 

3.4月23日(木)時点のXeneta社「極東出し米国西岸向け」のマーケット平均スポット運賃はFEU当たり$2,857ドルだった。

→ 東岸向けはFEU当たり$3,871ドル。

 

4.Xeneta社のSand主任アナリストのコメント。

(a) 極東出し米国西岸向けのスポット運賃は、過去1か月で+22%上昇し、極東出し米国東岸向けスポット運賃+19%上昇した。

(b) アジアの積替えハブや、中東の港に寄港しない北欧州出し米国東岸向けの大西洋航路でさえ、1か月前と比べて+46%も急騰している。

(c) 今回の危機は依然として深刻な状況だ。

→ 単に地域的な規模から世界的な規模へと移行したに過ぎない。

(d) 現在進行中の中東紛争で、各船社はほぼ予告なしで全く新しいサービス・ネットワークを構築することを余儀なくされている。

→ その中には「JEDDAH」などのランドブリッジ経由のルート変更や、インド洋沿岸の代替港の活用などが含まれている。

(e) 欧州の海上コンテナ輸送においては、こうした新たな航路パターンが現段階で確立されつつある。

(f) 各船社は船腹の再編成を実施しており、イラン紛争直後の急騰から、運賃は落ち着きつつあるということだ。

→ 1か月前と比較すると、極東出し北欧州向け平均スポット運賃は▲6%、地中海向けでは▲13%下落している。

 

5.他方、Xeneta社のSand主任アナリストは「欧州サービスにおける運賃の軟化局面は、必ずしもマーケットが正常に戻りつつあるというサインではない」として、警鐘を鳴らしている。

 

6.そのSand主任アナリストのコメント。(その2)

(a) ホルムズ海峡は、依然としてコンテナ船の航行に対し、事実上の封鎖が実施されている。

→ 停戦合意は不安定な状態だ。

(b) また、複数の船社が設定している代替ルートは、サプライチェーンを安定させつつあるものの、依然としてコストのかかる回避策だ。

(c) ホルムズ海峡における「本船の安全かつ自由な航行」がより確実に保障されるまでは、混乱の根本要因となる以下の要因が、引き続き貨物運賃を「イラン危機以前よりも上のレベルに押し上げる」ことになるだろう。

① 輸送時間の長期化

② スケジュール信頼性の低下

③ 代替ハブにおける混雑

④ サーチャージの上昇

 

7.先週末、イランのアッバス・アラグチ外相の動きを、イラン情勢に詳しい当局者の話として、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じている。

→ 中東地域およびパキスタンを訪問中に、仲介国パキスタンに対し、以下項目を含む戦争終結の条件と引き換えに、本船への攻撃を停止するという新たな提案を行った。

① 米海軍によるイラン港湾封鎖

② 核交渉の延期

 

8.Xeneta社のSand主任アナリストのコメント。(その3)

(a) 海運各社は、欧州での運賃下落を下支えするための船腹管理をおこなっている。

(b) 一方で、米国向けサービスでも(船腹量を)厳しく管理している。

(c) 主要な5つある往航サービスのうち4つで船腹量が低下している。

→ 極東出し北欧州向けサービスでは▲6.6%減少した。

(d) イラン危機によって引き起こされた混雑と意図的な船腹管理が相俟って、この紛争の直接的な影響が限定的であるはずの場所でも、運賃は全体的に高止まりしている。

【写真引用元:FreightWaves 2026年4月27日付け記事】
・すぐ近くで航行する軍艦とコンテナ船。
・中東のサービス航路では、このような光景がよく見られるようになった。
(写真:EUNAVFOR Aspides)

★ この記事では、地政学リスクが現代のグローバル・サプライチェーンにおいて、「物理的な距離を無効化する」ことがレポートされているとの印象を受けました。

★ 事実、中東のホルムズ海峡で起きた火種が、数千マイル離れたアジア〜米国間の運賃を押し上げるという「負のドミノ倒し」が発生しています。

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★ 中東情勢の緊迫化を受け、僅か1か月でスポット運賃は以下のように跳ね上がっている状況です。(記事の詳細:3項、4項(a)(b))

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★ さらに、直接的な紛争地域ではない大西洋航路(北欧州発)でさえ、+46%という驚異的な上昇を見せています。

★ これは、船社が中東ルート回避のために船腹(キャパシティ)を再編成した結果、世界的な需給バランスが崩れていることを示唆するとの受け止めです。(記事の詳細:8項)

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★  Xeneta社のSand主任アナリストが指摘する通り、理由は単なる航路の迂回だけではなさそうです。

(1)東南アジアハブのボトルネック

★ 足元では、中東情勢の混乱を避けるためのルート変更が頻繁に行われている模様です。

★ その結果、シンガポールやポートケランなどの東南アジアの積替えハブに貨物が集中してしまい、深刻な混雑を引き起こしています。

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(2)「意図的な」船腹管理

★ 船社は、「欧州向けの運賃下落を食い止めるため」、また「米国向けの供給を絞るため」に、戦略的に船腹量を削減(▲6.6%など)を実施しています。(記事の詳細:8項(c))

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(3)ランドブリッジと代替ルート

★ 「JEDDAH」経由の陸上輸送(ランドブリッジ)やインド洋の代替港活用など、コストのかかる回避策が最終的な運賃に転嫁されています。(記事の詳細:4項(d)、6項(b))

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★ そして、記事の終盤にある外交的な動きは、今後のマーケットを占う上で極めて重要だと思われます。

(A)イランの提案

★ 記事では、イランのアラグチ外相が「米海軍による港湾封鎖の解除」や「核交渉」を条件に、本船への攻撃停止を提案しているとレポートされています。(記事の詳細:7項)

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(B)マーケットの懸念

★ 停戦合意は依然として不安定で、ホルムズ海峡の「自由な航行」が完全に保障されない限り、記事の詳細6項(c)で揚げられた4要素が運賃を高止まりさせ続けると予測されています。

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★ ところで、今日(4/24(金))付けのDailyCargo電子版のニュースを見ると、この記事にでレポートされているXeneta社Sand主任アナリストの見解と対極の相違を見せていることが分かります。

www.daily-cargo.com

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★ 言うなれば「現在進行形の数値」を追うDaily Cargo電子版(SCFIベース)vs.「構造的なリスクと裏側の戦略」を読むFreightWaves(Xenetaベース)です。

★ 両者の2つの視点が交錯している――、このようにも言えそうです。

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★ 言うまでもない事ですが、この2つの情報は「どちらかが間違っている」のではないと思います。

★ まさに「見ているレイヤー(階層)が違う」と解釈するのが実務上は最も安全で、且つ合理的な目線との認識でおります。

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(ⅰ)SCFI(Daily Cargo 電子版)は「体感温度」

★ 例えば、昨日の気温が40度で、今日が35度になれば「下がった(ピークアウト)」と感じるのではないでしょうか。

★ SCFI(上海コンテナ運賃指数)は、まさにこの「昨日に比べた変化」を敏感に映し出していると言えます。

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(ⅱ)Xeneta(FreightWaves)は「気候変動」

★ 同社のSand主任アナリストが言いたいのは「35度に下がったとはいえ、平年(紛争前)の20度に比べれば異常な猛暑であることに変わりはない」ということだと理解です。

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★ 実際、足元のスポット運賃指数(SCFI)では下落の兆しが見えており、パニック的な急騰は一旦収束した可能性があるのは事実と思われます。

★ 一方、その国際的な海運プラットフォーム(Xeneta社)の分析では、ホルムズ海峡の封鎖に伴う船腹不足や迂回コストは解消されておらず、「運賃の底値」自体が以前より切り上がっているという見立てが強く打ち出されています。

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★ 従って、スポット運賃の下落を楽観視し過ぎないことが大切で、言い方を間違えると「関係者をミスリードさせるリスクが高い」と思っております。

★ 正直なところ、「ピークアウトした」という言葉から派生するデメリット(物流業者サイドの視点からの)による苦い体験を過去にした身からすると、Xeneta社Sand主任アナリストの見解の方を支持したいと考えます。

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★ 確かに「ピークアウト」という言葉は、投資家や荷主には心地よく響くものです。

★ 但し、物流業者(フォワーダーや船社)サイドからすると、メディアが軽率に「ピークアウト」という言葉を使うことで、実務上のコストや苦労が置き去りにされ、顧客(荷主)からの値下げ圧力だけが先行してしまうとも考えているのです。

★ 現場で貨物を動かしている担当者にとっては、まだ嵐の真っ只中にいるのに「雨が弱まったからもう傘はいらないよね」と言われるようなものです。。(笑)

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★ 要すれば――、構造的なフレームワークから目を離すことなく、引き続き高いコスト水準を前提とした物流計画を維持すべきではないかと。

★ スポット運賃は確かに乱高下するが、輸送の「土台」となるコスト構造:「ルート」「船腹量」「ハブの混雑」が破壊されていると見るべきなのです。

★ そうである以上、以前の安値に戻ることは論理的にあり得ない――、立場上の意味も込めて、Sand主任アナリストの見解は「盾」にして活用したいとの考えです。

 

以上

 

 

 

 

 

 

 

 

中東ランドブリッジ:輸送コストが急騰、需要が供給4倍~5倍超える

★著作権保護の観点から記事内容の取扱いにご注意賜りますようお願い申し上げます。

 

英ロードスター誌:2026年4月24日付け記事

theloadstar.com

 

【記事のポイント】

1.極端な需給逼迫と輸送コストの爆発的急騰

(a) ホルムズ海峡封鎖を受け、陸上輸送への需要が供給のx4倍~x5倍に急増。

(b)「JEDDAH」「JEBEL ALI」へのトラック運賃が従来のx約5倍(R4,000リヤル → 最大R21,000リヤル)に急騰。

→ 物流コストを著しく押し上げている。

 

2.地政学的リスクによるハブ港の限定化

(a) オマーンの「SALALAH港」やUAEの「KHOR FAKKAN港」が攻撃を受けたことで、相対的に安全なサウジアラビア「JEDDAH港」に貨物が集中。

(b) 輸送オプションが絞られたことで、サプライチェーンのボトルネックがより深刻化している状況。

 

3.主要船社による「限定的な解決策」という現状評価

(a)「MAERSK」や「H-L」は、この中東ランドブリッジの現状を「キャパシティ不足」「法外なコスト」と指摘。

(b)  現時点ではあくまで緊急避難的な「部分的な気休め」+「構造的な代替ルートとしては未成熟」との見解が示されている。

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【記事の詳細】

1.中東ランドブリッジによる輸送ソリューション。

(a) 海上輸送から切り離されたマーケットへのコンテナ・サプライチェーンを実現しようとしている。

(b) 一方、ホルムズ海峡の閉鎖によって、膨大な需要で押し潰されようとしている。

 

2.本誌ロードスターへの情報筋の話。

(a)「JEDDAH」からUAE(アラブ首長国連邦)へのトラック輸送料金は現在、イラン紛争勃発前のx4倍~x5倍に急騰している。

(b) GCC(中東湾岸協力会議)諸国の輸入業者が「KHOR FAKKAN」「SALALAH」「JEDDAH」を経由する陸上ルートへの切り替えを実施。

→ コンテナ・サプライチェーンを維持しようとしている。

 

3.但し、サウジアラビアの紅海沿岸にある「JEDDAH港」が、本船の停泊地として最も安全なオプションであり続けている

→ UAE(アラブ首長国連邦)の「KHOR FAKKAN港」とオマーンの「SALALAH港」がイランのミサイル攻撃を受けたためだ。

theloadstar.com

4.「JEDDAH」のある地元関係者の話。

(a) 今週の道路貨物の輸送キャパシティに対する需要は、供給の約x4倍~x5倍のレベルにまで達している。

(b) そのため、輸送作業への支払代金が異常に高くなっている

 

5.イラン戦争以前は「JEDDAH」から「JEBEL ALI」までのトラック見積料金は、約SAR4,000サウジアラビア・リヤル($1,066ドル)前後で推移していた

→ 現在はSAR18,000($4,799ドル)サウジ・リヤルからSAR21,000サウジ・リヤル($5,599ドル)にまで値上がりしている状況だ。

 

6.その結果、コンテナ船社は荷主の需要を抑え始めている。

→ 一方、LSP(物流サービス・プロバイダー)は「この陸上輸送ルート(中東ランドブリッジ)が、ホルムズ海峡の封鎖に対する適切な対処方法となること」を期待している。

 

7.「MAERSK」は昨日(4/23(木))、顧客向けレターで次のように述べた。

(a) 陸揚げされた貨物をオマーン(SALALAH)やサウジアラビア(JEDDAH)といった出口港へ輸送する目的で、この陸上輸送(中東ランドブリッジ)によるソリューションが模索されてきた。

(b) 一方で、長距離輸送のキャパシティは非常に限られており、コストも法外に高い

→ 現状では拡張可能で、且つ、実現可能なオプションにはならない。

 

8.他方、H-LのRolf Habben Jansen CEOは昨日(4/23(木)、記者団に対し次のように語った。

→ この新しい陸上輸送路(中東ランドブリッジ)は、荷主にとっては、部分的な気休めにしかならない可能性がある。

 

9.そのH-LのJansen CEOの話。

(a)「DUBAI」や、さらに北の場所への供給に関して言えば、複数の団体が運営する様々な陸上輸送路(ランドブリッジ)が存在する。

(b) それらは、当初懸念されていたよりも多少の輸送キャパシティはあるかも知れない。

→ だが、構造的に必要とされる輸送キャパシティには明らかに遠く及ばない。

(c) また、「H-L」の本船に積まれ、且つ、イラン紛争の影響を受けた貨物の大部分は解決している。

(d) 私は「必要な場所にコンテナを届けるために人々と協力する」とお話している。

→ たとえそれが、当社にとっては大きな労力で、お客様に対する追加費用を含むものだとしても、その取り組みが予想以上に建設的だったことに、私は嬉しい驚きを感じている。

(e) 現状を見ると、滞留していた貨物の約92%は、行き先が明確に決まっており、殆どの場合、配達日も決まっている。

→ 実際には、当初当社が、恐らくは恐れていたよりも、少しばかりスムーズに進んでいると思う。

【写真引用元:2026年4月24日付け記事】

★ 今回の記事は、4/17日(金)付けのレポート「新しい中東ガルフ貿易回廊」の内容と比較して読み必要があると感じました。

★ つまり、現在の混乱は「次世代物流への過渡期における生みの苦しみ」と捉えることが可能ではないかと思います。

→ 4/17(金)配信「【ご参考情報】新しい中東ガルフ貿易回廊:業者への檄「地場業者は積極的に活用すべし!」」

★ 一方で、長期的な視点から言えば、それでも「ゲームチェンジャー」となる可能性は、依然極めて高いと思われます。

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(1)「『JEBEL ALI』の一極集中」からの脱却とリダンダンシー(冗長化)の確立

★ これまでは効率性の観点から「JEBEL ALI」が圧倒的なハブでした。

★ 一方、今回のホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」が現実味を帯びたことで、荷主や物流業者は「コストが高くても、止まらないルート」を構造的に組み込む必要性を迫られています。

★ 今回の危機を契機に、サウジアラビアの「JEDDAH」や同国北西部の未来計画都市「NEOM」、さらにオマーンの「SALALAH」を結ぶ陸路が「緊急用」から「常設の代替オプション」へと格上げされる動きの加速化が予想されます。

→ 最下段に掲載したMAPをご参照ください。

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(2)インフラ整備の加速と「規模の経済」の追求

★ 現時点で「MAERSK」らが「実現可能性が低い」としている最大の理由は、トラック輸送という点(低い積載効率)と、通関&国境検問の物理的限界にあると思われます。

★ 一方、現在GCC諸国が推進している「GCC鉄道(アラブ湾岸鉄道網)」などの大型鉄道プロジェクトがこれらと連動すれば、キャパシティは飛躍的に拡大し、コストも劇的に下がることになります。

★ 現行の(法外に)高額なトラック運賃は、却って、鉄道などの「構造的な陸上インフラ」への投資を正当化する強力なインセンティブとして認識されるのではないでしょうか。

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(3)GCC諸国の経済統合と「物流ハブ」としての地政学的価値

★ サウジアラビアの「ビジョン2030」に代表されるように、中東諸国は「石油依存からの脱却」を掲げ、「物流を国家戦略の柱」に据えています。

★ 中東ランドブリッジの整備は、単なる輸送路の確保に止まらず、サウジアラビアを紅海とガルフを結ぶ「中東の心臓部」へと変貌させる試みとなっています。

★ 中東ガルフ域内での税関手続きの共通化(GCC通関同盟の深化)などが進めば、物理的な距離以上に「速く、確実な」ルートとしての地位を確立することは確実と思われます。

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★ この記事を読む限り、現時点では「供給不足と高コスト」という厳しい現実に直面しているのは事実のようです。

★ 但し、これは(逆説的に)「需要が既に存在していることの証明」でもあるとも言えるのではないかと思います。

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★ 短期的には混乱が続くものの、数年後には「ホルムズ海峡をバイパスする安定した陸上回廊」が中東物流のスタンダードとなる可能性は高いと見ています。

★ 「JEBEL ALI」の一極集中ではない、より強靭なマルチモーダル(複合的)な物流ネットワークが完成することが予想されます。

★ 上記4/17(金)付けのレポートにあった「地場業者は積極的に活用すべし」という檄は、この混乱期にルートを開拓&習熟したプレイヤーだけが、将来的にインフラが整った暁に、その主導権を握れることを示唆するもの――、そのように理解した次第です。

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★ 以下のマトリックスは、足元の「緊急避難的なフェーズ」から、インフラが整備される「構造的変革フェーズ」までを3段階で整理しています。ご参考まで

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★ また、「JEBEL ALI」の一極集中という呪縛から脱却するという観点では、どの物流企業も一致していると見ています。
★ 記事でレポートされている紅海沿岸の「JEDDAH」が相対的に最も安全である限り、この港を新たなハブとして活用するのは合理的なオプションではないかと。(記事の詳細:3項)
★ また、長期的な視野に立ってみれば、未来都市の「NEOM」の存在は見逃せないとの意見です。
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★ 上記MAPも併せてご参考に供します。
 
以上

 

 

 

 

極めて重要な水路に通行料:マラッカ海峡に「ドル」マークが点滅

★著作権保護の観点から記事内容の取扱いにご注意賜りますようお願い申し上げます。

 

英ロードスター誌:2026年4月23日付け記事

theloadstar.com

 

【記事のポイント】

1.マラッカ海峡の「有料化」という爆弾発言

(a) インドネシアのサデワ財務相が、世界貿易の要衝「マラッカ海峡」を通過する商船に対し、「通航料」を課す構想をブチ上げた。

(b) イランの主張を引き合いに出した「x1通航当たり$200万ドル」という極端な数字を用いつつ、年間$2000億ドル(約30兆円)という莫大な収益の可能性をチラつかせた

「タダ乗りは許さない」という強硬な姿勢を示した格好だ。

2.沿岸4カ国の足並みの乱れと「タイ外し」

(a) マラッカ海峡を共同管理してきた「マレーシア」「シンガポール」「タイ」との既存の協力関係に一石を投じた格好。

→ マレーシアは「単独行動は許されない」と即座に反発。

(b) インドネシア側は「(利益を)3カ国で分ければいい」と「タイをあえて除外するような発言」をした。

→ この地域における協力体制の枠組みを根本から揺さぶる「分割統治的な」危うい駆け引きが見て取れる状況。

3.「航行の自由」の崩壊と米国の警戒

(a) 今回の動きは、国際法が保障してきた「航行の自由」という大原則に対する重大な挑戦となるもの。

(b) 米国ホワイトハウスはFMC(連邦海事委員会)に対し、既にマラッカ海峡を含むチョークポイントの調査を指示している。

「物流の武器化」が現実の脅威として、ワシントン(ホワイトハウス)における安全保障上の最優先事項に浮上したことを裏付けた格好。

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【記事の詳細】

1.最近は誰もが同じことをしている。

(a) まず「フーシ派」、次に「イラン」、そして「ワシントン」が、そうすると決めている。

(b) 今度は「ジャカルタ」が、死活的に重要な貿易動脈「マラッカ海峡」を、少なくとも「金銭を支払わない国に対して閉鎖する」という案を弄んでいる。

→ 恐らくは冗談半分だろうが…。

 

2.インドネシアのプルバヤ・ユディ・サデワ財務大臣が、どれほど真剣にこの問題に取り組んでいたのかは、議論の余地がある。

→ サデワ財務大臣は「商船がマラッカ海峡を、通航料なしで通り抜けていくことが、どれくらい正しくて、どれくらい間違っているのか?」という疑問を投げかけている。

 

3.首都ジャカルタで開催されたインフラ・シンポジウムにおける同大臣の演説。

→ 「米国」そして「一部の欧州諸国」をも取り囲んでいる不平不満の政治――、より広い世界で「ただ乗り(フリーライド)が横行している」という考え方の兆候がそこにはあった。

 

4.具体的な例を挙げる。

(a) サデワ財務大臣の決意とは、プラボウォ・スビアント大統領の「インドネシアは周辺国ではない」という言葉を繰り返すことにある。

(b) そして――、「インドネシアは海峡通行料の問題点を構築する中で、世界貿易に関して、より積極的な役割を果たす必要がある」ということだ。

 

5.確かに、通航料の導入は、インドネシアの年間歳入にとっては潤沢な景気づけとなるだろう。

(a) 2025年を通じて、マラッカ海峡ではx10万回の本船通航があった

(b) テヘランが求めている数字、即ちx1通航当たり$200万ドルの通行料であれば、インドネシアの国庫には$2000億ドルが加算されることになるだろう。

 

6.このマラッカ海峡は「インド洋」と「太平洋」との間を結ぶ最短ルートだ。

(a)「ジャカルタ」だけのものではなく、「マレーシア」と「シンガポール」にも隣接している。

(b) また、既存の協定で、タイ政府もこの水路の管理に発言権を持っている。

 

7.海運セクターが憂慮すべきこと。

(a) 通航料制度の考えに強く反発するだろう海運セクターにとっては、サデワ財務大臣の発言は「クアラルンプール」からは、あからさまの非難を受けることはなかった。

(b) 但し、マレーシアのモハマド外相は、それよりもインドネシアの単独行動主義(ユニラテラリズム)に異議を唱えた格好だ。

 

8.マレーシアのモハマド外相は、インドネシアのサデワ財務相に直接語りかけた。

(a)「インドネシア」「マレーシア」「シンガポール」および「タイ」は、マラッカ海峡のステータスについて「水も漏らさぬ了解事項」を有している

(b) 現行の運用モデルに何らかの変更を加えるならば、「4カ国すべての協力が含まれなくてはならない」と述べた。

 

9.モハマド外務大臣は、更にこう付け加えた。

(a) 一方的に行うことはできない。

(b) マラッカ海峡の「パトロール」および「安全保障」に関する共同合意を締結した際、その基本原則は「一方的な決定は許されない」ということだった。

 

10.このインドネシア方式について。

(a) 仮に、それが900kmの水路に通行料を課すという「お遊びとも言える原則」でなければ、モハメド外相がそれを拒否したことで、モハメド外相はほぼ確実に、海運業者は嬉しさで心拍数を上昇させることになる。

(b) 一方、そのモハメド外相が、仮に$2000億ドルもの「棚ぼたの可能性」を完全にディスカウントしたならば、同外相は愚か者になってしまうだろう。

 

11.4カ国で分割したとしても、各国の年間政府支出の半分をカバーできることになるだろう。

→ だが、その合意さえも議論の余地があるようだ。

 

12.インドネシアのサデワ外相は、タイのことは無視しつつ、笑いながら「3カ国で分割すれば『なかなかいいんじゃないか?』」と発言した。

 

13.そして、こうした動きへの可能性は、今や見過ごされることはない。

→ ワシントン(ホワイトハウス)は、昨年、FMC(連邦海事委員会)に対して以下項目の調査を行うよう指示した。

① 海上交通のチョークポイントに関する調査

② 「(米国にとって)不利になるような海上輸送に係る諸条件」を生み出す「政策」および「慣習」の調査

 

14.このワシントン(ホワイトハウス)の調査リストから目立つ形で欠落していたのがホルムズ海峡だ。

(a) 恐らく当時から、アメリカ大統領の頭の中には、「ホルムズ海峡では通行料を取ることが出来る」という考えが音を立てて響いていたのだろう。

(b) 一方、そのワシントン(ホワイトハウス)のリストには、マラッカ海峡(ホルムズ海峡ではなく)が含まれていた。

 

15.「その調査がどのような結果になるか?」、そして、インドネシアのサデワ財務相の発言のように「そこからどのような結論が導き出されるか?」には議論の余地がある。

→ 但し、グローバル化時代の根本理念となる「航行の自由の流れ」に関する将来を巡って不安感が高まっていることについては、それほど議論の余地はない。

【写真引用元:THE LOADSTAR 2026年4月23日付け記事】

★ この記事がレポートした通りだとすれば、世界の海運業界および国際政治にとって「極めて衝撃的なニュース」です。

★ 世界でも有数の海上交通の要衝(チョークポイント)「マラッカ海峡」において、インドネシアが「通航料」を徴収する?!というのです。

★ もし本当なら、インドネシア政府は「これまでの国際海事秩序を根底から覆しかねない検討を始めた」ことになるからです。

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(1)マラッカ海峡「有料化」構想の要点

★ インドネシアのサデワ財務大臣が発信した内容は、冗談混じりとはいえ、非常に具体的な野心を孕んでいるという印象を受けています。

① 「フリーライド(ただ乗り)」への不満:世界貿易の動脈として機能しながら、沿岸国に経済的還元がない現状を、米欧の「不平不満の政治」になぞらえて批判する内容になっている。

② 莫大な潜在収益:2025年の年間通航数x10万隻に対し、x1隻当たり$200万ドル(イランが以前言及した数字を引用)を課した場合、年間$2000億ドル(約30兆円超)という、一国の国家予算に匹敵する額となる。

③ 「周辺国ではない」というプライド:プラボウォ大統領の意向を汲み、インドネシアが国際社会において受動的な立場から、ルールを規定する側(プライス・メイカー)への転換を図ろうとする意図が見え隠れしている。

+++

(2)沿岸諸国の温度差と外交的摩擦

★ マラッカ海峡の管理については、伝統的に沿岸諸国の協力体制に基づくものであることが知られています。

① マレーシアの反応:モハマド外相は「単独行動」の発言に対して、厳しく戒める態度を取った。

「インドネシア」「マレーシア」「シンガポール」「タイ」の4カ国による「水も漏らさぬ了解事項」を強調し、一方的な変更を拒絶する構え。

② タイの除外案:サデワ財務相が「3カ国で分ければいい」と笑いながら発言したことは、タイを管理体制から排除、或いは軽視する意図が見え隠れするもの。

→ この地域での協力的枠組み(ASEAN等)への亀裂を予感させる内容。

+++

(3)米国の動きと「航行の自由」への脅威

★ この記事で最も注目すべきは、実に「米国ホワイトハウスが既に動いている」という箇所だと思います。(記事の詳細:13項)

① FMC(連邦海事委員会)の調査:2025年から「海上交通のチョークポイント」に関する調査を開始している。

→ その調査リストに「マラッカ海峡」が含まれていることは、米国がこの事態を予見し、警戒を強めていたことを示している。

② 「航行の自由」の終焉か?:公海に近い性質を持つマラッカ海峡での通航料徴収は、国連海洋法条約(UNCLOS)が定める「無害通航権」や「国際海峡における通過通航権」と真っ向から対立する可能性がある。

+++

★ 繰り返しになりますが、この動きが現実味を帯びれば、海運業界には以下のような激震が走ることは必至だと思います。

(A)物流コストの爆発的上昇

★ x1隻$200万ドルの通航料は、コンテナx1本当たりの運賃を$数百ドル〜$数千ドル単位で押し上げることになります。

→ 世界的なインフレを再燃させる要因となることが予想されます。

+++

(B)ルートの変更

★ 通航料を回避するために、「ロンボク海峡」や「マカッサル海峡」或いは「北極海航路」へのシフトが加速し、「燃料消費」と「排出ガス」の増加を招く恐れがあると思われます。

+++

(C)地政学的リスク

★ 通行料を支払わない国への「閉鎖」が実行されれば、軍事的緊張に直結することは必至だと思います。

+++

★ インドネシアのサデワ外相のこの発言は、単なる資金調達のアイデアではないと言えます。

★ この発言を読み替えれば、「グローバル化の恩恵を享受してきた先進国に対し、資源や地理的優位性を持つ国々が対価を要求し始めた」ということではないでしょうか。

★ まさに「世界秩序の変化を象徴する出来事」として捉えるべき事象との理解です。

+++

★ 最後になりましたが、この「マラッカ海峡の通行料問題」と、日本企業が現在注視している「台湾海峡の緊張」が同時発生した場合の「最悪シナリオ」についてMAPを作成しました。

★ 上記の「ロンボク海峡」「マカッサル海峡」「北極海航路」への回避シフトが図示されたものになっています。

+++

+++

★ あまり想像したくはなかったのですが、この記事を読みながら、台湾海峡の問題が脳裏を掠め続けていたのは事実です。
★ 万一そうなった場合、まさに「ダブル・チョーク(二重絞殺)」の最悪シナリオが出現することは、もはや言うまでもありません。
★ 単なるコスト増レベルの話ではなく、日本の国家存亡にまで至る「企業活動の根幹を揺るがす致命的な事態」――、そう言わなくてはならないと思います。
+++
★ インドネシア外相の発言が「冗談」であれ何であれ、世界的な「地政学リスク」の高まりは、日本企業に対して重大な選択を迫るものになることは必至です。
★  「グローバル・サプライチェーンの根底からの再構築「脱・一極依存」「国内回帰」「同盟国間でのサプライチェーン完結」を、文字通り命がけで求めなくてはならない――、そのように認識する必要があるとの意見です。
+++

+++

★ この記事は日本企業におけるBCP(事業継続計画)において、「マラッカと台湾海峡が同時に閉ざされた時、自社は1週間後に存続しているか?」という極限の問いを立てることを(図らずも)求めた内容との受け止めました。
 
以上

「航空運賃」上昇続ける、「需要の弱含み」をよそに

★著作権保護の観点から記事内容の取扱いにご注意賜りますようお願い申し上げます。

 

英Air Cargo News:2026年4月20日付け記事

www.aircargonews.net

◆ オランダの航空貨物データ調査会社WorldACD社の最新データ:

→ キャパシティが増加し、需要が落ち込んでいるのにも関わらず、ここ数週間、航空運賃は上昇し続けている。

 

【記事のポイント】

1.「需要減・運賃増」という異例の逆転現象

(a) 世界的な需要は前年比で▲8%と落ち込み、キャパシティも微減(▲3%)しているのにも関わらず、スポット運賃は前年比+37%(キロ当たり$3.76ドル)と大幅に上昇している。

(b) 通常、需要が減れば運賃は下がるが、足元では市場原理を上回る外部要因が価格を押し上げている状況。

2.イラン戦争によるコスト構造の激変

→ 運賃高騰の直接的な要因は、2月末に始まったイラン戦争だ。

 航路の長距離化: 紛争地を回避するための迂回ルート飛行。

 燃費の急騰::ジェット燃料価格の急騰。

 海上輸送からの流入: 海上貨物の深刻な「遅延」「積み残し」に伴い、中東・南アジア(MESA)発の貨物が航空便へ流出。

3.依然として不透明な先行きと高止まりの懸念

(a) ワシントンとテヘランの間で「2週間の停戦合意」がなされたものの、和平への展望は極めて脆弱。

(b) 懸念材料が多いため(以下の通り)、航空運賃は「当面は高止まりで推移」というのが業界の共通認識となっている。

① 燃料コストの高止まり

② 旅客機(ベリー)キャパシティの回復遅延

③ 海上輸送の混乱継続

+++

 

【記事の詳細】

1.オランダの航空貨物データ・プロバイダー:WorldACD社の統計。

(a) 4月12日(日)終了週(WEEK 15)の航空貨物スポット運賃は、前年同期比で+37%上昇して、キログラム当たり$3.76ドルとなった。

→ イラン戦争が始まった2月末と比較すると40%を超える上昇

(b) この上昇は、イラン戦争の結果として、以下要因によって生じたものだ。

① サプライチェーンに圧力

② 航空会社がより長い距離をフライト

③ ジェット燃料価格が急騰

 

2.そのWorldACD社のデータ。

(a) WEEK 15の北米発のスポット運賃は、前年同期比で+52%上昇。

→ キログラム当たり平均$2.73ドルとなった。

(b) 一方、アフリカ発は前年同期比で+62%上昇。

→ キログラム当たり$2.95ドル。

(c) アジア太平洋発は前年同期比で+24%上昇した。

→ キログラム当たり$4.95ドルに。

 

3.他方、WEEK 15の需要水準は前年同期比で▲8%減となっている。

(a) キャパシティも2025年の同じ週と比べて▲約3%減少している。

(b) また、これらの数値にはイースター休暇のタイミングも影響している。

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【引用元:Air Cargo News 2026年4月20日付け記事】

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4.キャパシティは昨年の水準を下回っている。

→ 但し、イラン戦争の勃発当初に記録された▲約20%の減少からは回復している。

 

5.WorldACD社は、同社の週次マーケット・サマリーで次のように述べている。

(a) 全世界キャパシティは、昨年2025年の同じ時期の水準近くまで反発はした。

→ 但し、中東・南アジア(MESA)出しのキャパシティの方は、前年同期比で▲約20%減少したままだ。

(b) 一方、前年比でキャパシティが不足している。

→ 但し、中東・南アジア(MESA)からの貨物トン数は、この2週間(WEEK 14&WEEK 15)では、前年比で僅かに増加した。

(c) これらは、以下の要因を反映している部分もある。

① 貨物機の利用率が向上したこと

② この中東・南アジア(MESA)(そこでは海上貨物輸送が、深刻な船腹の「制約」「遅延」「バックログ(積み残し)」に直面している)からの船腹に対する高い需要

(d) だが、昨年3月末のイード・アル=フィトル(*)の影響も(前年比増の)その一助となっている。

(*)イスラム教で最も重要な祝祭の一つで、約1ヶ月間にわたるラマダン(断食月)の終了を祝う「断食明けの祭り。

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6.WorldACD社の分析。

(a) 南アジア発のキャパシティは、現段階ではイラン戦争以前の水準から、僅かに▲5%減で止まっている。

→ 欧州行きの直行便がさらに増えたお陰だ。

(b) 今年の残りの期間の見通しについては不透明だ。

 

7.WorldACD社の分析。(その2)

(a) 今月、ワシントンとテヘランとの間で2週間の停戦合意が成立した。

→ 紛争の恒久的な解決への期待が高まった。

(b) 但し、この停戦合意は依然として壊れやすいもので、平和への見通しは不透明だ。

(c) 多くの業界関係者は、現在の停戦が維持されたとしても、インフレと燃料コストの上昇はしばらく持続する可能性が高いと警告している。

(d) また、現在の危機が迅速に解決されない限り「ジェット燃料不足」と「ジェット燃料コストの高騰」で、今後数週間で「フライトのキャンセル」や「航空貨物料金の更なる値上げ」につながる懸念が高まっている。

(e) 他方、中東を通過するベリーカーゴのキャパシティが完全に回復するには、時間がかかるだろう。

(f) コンテナ船社は、紛争前の貨物フローがすぐに回復するとは期待していない。

→ 航空貨物の運賃は暫くの間、高止まりする可能性が高いということだ。

【写真引用元:Air Cargo News 2026年4月20日付け記事】

★ 今回の記事は、需要が弱含んでいる(前年比▲8%減)にも関わらず、運賃が急騰するという「マーケットの歪み」についてレポートしています。

★ 現在、航空貨物運賃は「需要と供給のバランス」よりも、「運航コストの増大」と「地政学的な供給網の混乱」によって押し上げられている状況と言えます。

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★ 今回の運賃上昇を招いている要因として、以下の3項目が想定できると思います。
① サプライチェーンへの物理的圧力:イラン戦争に伴う飛行禁止区域の回避により、航路が長距離化。
② 燃費コストの急騰:ジェット燃料価格の記録的な上昇が、ダイレクトに運賃(サーチャージ等)に転嫁されている。
③ 海上貨物からのシフト:中東・南アジア(MESA)発の海上輸送で深刻な「遅延」「バックログ」が発生。
→ 緊急避難的に航空貨物への需要が流入している。
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★ また、地域別のスポット運賃を見ると、その上昇率は顕著です。(以下の通り)
・ 北米発: +52%増($2.73ドル per KG)
・ アフリカ発:+62%増($2.95ドル per KG)
・ アジア太平洋発:+24%増($4.95ドル per KG)
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★ WorldACD社および業界関係者は、今後の見通しについて、「停戦合意の脆弱性」を最大の懸念材料として挙げています。(記事の詳細:7項(b)
★ その見解を要約すれば、「ワシントンとテヘランの停戦合意が成立したとはいえ、平和への道筋は不透明。燃料高騰とインフレが続く限り、運賃の高止まりは避けられないだろう」ということに尽きると思われます。
★ さらに、本件を取り巻くリスクを整理すれば、以下のようになると思われます。
(1)燃料不足の深刻化
★ 危機が長引けば、燃料確保が困難になり、さらなる「減便(フライト・キャンセル)」や「運賃値上げ」の引き金になる恐れがあります。(記事の詳細:7項(d))
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(2)ベリーキャパシティの回復遅延
★ 旅客機のベリー(  下部貨物スペース  )の供給が中東地域で戻るには、かなりの時間を要すると予測されています。(同上7項(e))
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(3)コンテナ船の正常化待ち
★ 海上輸送が正常化しない限り、航空貨物への「押し出し需要」は継続すると予想されます。(同上7項(f))
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★ 最後になりましたが、日本企業に関係する主要ルートにおけるロシア上空回避」&「イラン領空封鎖」に関する絵図を作成しました。
★ 日本企業の前に立ちはだかる「領空の閉鎖」という地政学リスクに関して、先ずはその地理的な迂回範囲の大きさ(距離と燃料の増加)のイメージ共有に役立ていただければ幸いです。ご参考まで
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以上

日本の自動車メーカー:中東ガルフ戦争で輸出に打撃「生産台数を削減」

★ 著作権保護の観点から記事内容の取扱いにご注意賜りますようお願い申し上げます。

 

英ロードスター誌:2026年4月20日付け記事

theloadstar.com

 

【注記】

★ 先ず、自動車専用船(PCC/PCTC)のオペレーション実務を見聞きしてきた下名のような人間の目線から見たとき、この記事の記述には明らかな「情報の混同(コンテナ船 vs.自動車専用船)」がございます。

★ 他方、日本の輸出基幹産業「自動車セクター」への打撃それ自体は、一定のタイムラグを経て多くの産業セクターに大きく反響してくることもあり、この記事に違和感を抱きつつも(敢えて)掲載することに致しました。

★ そのため、この記事を執筆した記者が混同したと思われる「問題個所」については、下線を引いて「原文まま」と付記しております。

★ 恐れ入りますが、今回の記事については、先ずは「イラン戦争に伴う日本の自動車メーカーの動静を知る」ことにフォーカスして読んで頂きますようお願い申し上げます。

 

【記事のポイント】

1.物流網の寸断と本船の足止め

(a) ホルムズ海峡での軍事的な緊張により、日本の自動車専用船x15隻(約7万台分)が現場で立ち往生している。

(b) 日本の海運各社はホルムズ海峡の航行を停止しており、中東向けメインルートが物理的に遮断された状態にある。

2.国内生産への直接的な打撃

(a) 日本車にとって中東はシェア30%を誇る巨大市場だが、現地生産拠点が少ないため、輸出停止がそのまま国内工場の稼働に影響している状況。

(b)「トヨタ(月産▲2.4万台減)」、「日産」「マツダ」などが相次いで中東向けモデルの生産削減や停止を余儀なくされている。

3.迂回ルート(喜望峰経由)の経済的断念

(a) コンテナ船が採用している「アフリカ南端(喜望峰)への迂回」は、航海日数がx2倍(約100日)に延び、燃油コストも激増する。

(b) 自動車メーカー各社は、「コスト」と「時間」の面から「経済的な合理性がない」として、この代替案に否定的な立場を取っている。

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【記事の詳細】

1.何よりも――、米国・イスラエル vs.イランの戦争で、日本の中東向け自動車輸出が混乱を来している。

 

2.SeaSearcher(英Lloyd's List Intelligenceが提供している本船情報のオンライン検索サービス(データベース))の本船追跡データ。

→ ホルムズ海峡で日本の運航する自動車専用船x15隻が立ち往生しており(原文まま)、最大x7万台の車両が足止めされている。

 

3.また、日本の海運会社は、ホルムズ海峡を通過する自社船の航行を停止している。

(a)「いすゞ」を除き、日本の自動車メーカーは中東に生産工場を保有していない。

(b) 中東地域は輸入に依存する必要がある。

 

4.日本自動車工業会のデータ数字。

(a) 昨年2025年、日本は中東へx87万台の自動車を輸出。

(b) 中東地域におけるマーケット・シェアは30%を占めた。

 

5.中東紛争は、今年2026年に▲x87万台の自動車輸出を失う可能性がある。

→ これを受け、日本の自動車メーカーは、中東市場向けモデルの生産を削減した。

 

6.今年3月、「日産」は九州工場での生産台数を▲x約1200台削減した。

(a) 削減対象は、主に「X-Trail(エクス・トレイル)」や「Serena(セレナ)」など、中東向けに販売される車種だ。

(b) 中東は北米に次ぐ「日産」の第2のマーケットだ。

→ 昨年の販売台数はx7万7000台を超え、2024年比で+24%も増加している。

 

7.「トヨタ」は3月にも中東向け車両の生産を▲x2万台削減した。

→ 今月はこれを▲x2.4万台減に拡大する。

 

8.他方、「マツダ」は中東向けに年間約x3万台を生産している。

→ 但し、戦争勃発直後に生産を停止しており、この停止措置は5月まで続く見通しだ。

 

9.日本の自動車メーカー各社は、本船の航路を喜望峰の周回ルートに変更した「コンテナ船社の足跡(原文まま)」を追うことには否定的だ。

(a) 自動車メーカー各社は、「迂回することで、航海日数がx2倍の100日(原文まま)となっている。

(b) さらに、このイラン戦争が開戦して以降、燃油コストが倍増している。

→ 自動車メーカー各社としては、「『コスト増』と『航海日数の長期化』は経済的に意味をなさない」としている。

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【写真引用元:THE LOADSTAR 2026年4月20日付け記事】

★ 冒頭で記した「問題個所」に注意しながら、本件のポイントを損なわないように注意してコメントしたいと思います。

(1)物流の停滞と海上輸送の混乱

① ホルムズ海峡(付近)での足止め: 英国Lloyd's List Intelligenceのデータによると、日本の自動車専用船x15隻が立ち往生しており、最大7万台の車両が中東への入り口でストップしている。

② 航行停止:日本の海運大手はリスク回避のため、ホルムズ海峡の通過を全面的に停止している。

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(2)生産への直接的な打撃

★ 中東地域は日本からの輸入依存度が高く(2025年実績で87万台、シェア30%)、輸出不能がそのまま減産に直結しています。

① 「トヨタ」:3月の▲2万台減産に続き、今月は▲2.4万台まで減産規模を拡大。

② 「日産」:九州工場で「エクストレイル」や「セレナ」など、中東向けの主力車種を▲約1.2万台減産。

→ 中東は「日産」にとって北米に次ぐ重要市場(前年比+24%増)となっており、打撃は甚大。

③  「マツダ」: 年間約3万台の中東向け生産を、開戦直後から5月まで全面的に停止。

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(3)迂回ルート(喜望峰経由)の断念

★ 例えば、コンテナ船業界では一般的な「喜望峰ルート」への変更について、自動車メーカー各社は以下の理由から否定的です。

① リードタイムの倍増: 航海日数が100日に達し、販売サイクルが維持できない。

② コストの急騰: 紛争による「燃油価格の高騰」+「航路延長」によって、経済合理性が保てない。

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★ この記事を文字通り読めば、 2025年に好調だった中東マーケット(87万台)が、2026年には「ゼロ」になる可能性が出てきたということでしょうか。

★ 仮にそうであれば、 日本の自動車メーカーは「極めて厳しい経営判断を迫られている」と言えます。

★ とりわけ現地生産拠点を持たないメーカーにとって、この物流断絶は代替手段のない死活問題――、このような推論さえ成り立つと受け止めています。

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★ ところで、冒頭でも注記しましたが、記事に対する「違和感」について少しばかり述べたいと思います。

★ そもそもの話として、日本の主要メーカー「トヨタ」「日産」「マツダ」等が、完成車を中東へ輸出する際、コンテナ船を使用することはまずないとの認識でおります。

★ 大量輸送の手段としてPCC(自動車専用船)が使われる――、これが常道だと思います。

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★ 次に、「日本→中東(ペルシャ湾)」の航路で100日、或いは基準となる50日としてレポートされた数字は、片道のトランジットタイムとしては明らかに長すぎると思います 

★ 通常、日本からJEBEL ALI(UAE)までは20日〜25日程度ではないでしょうか。

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★ さらにこの記事では、この「100日」という航海日数に関して、「どこからどこまで」を記載していません

★ 記事の文脈から判断して、恐らくは「日本→中東」ということなのでしょうが、だとすれば問題です。

★ この記事を執筆したAlison Koo記者は、「ホルムズ海峡を通れない ⇒ アラビア海側からペルシャ湾内に入れない」or「アフリカを大回りして反対側からアプローチする」という(かなり)極端な物流断絶を表現しようとした可能性のあることを感じるからです。

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★ そのKoo記者は、以下のようなロジックに陥ったのでは(?)と推測しています。

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 ・「通常、中東へはすぐ着くはず(ここでの基準を自動車専用船の足の遅さから50日と(勝手な解釈で)誤認)」 

    ↓ 

・「戦争でホルムズ海峡が封鎖された ⇒ 迂回が必要だ」

      ↓ 

・「コンテナ船のニュースで『喜望峰回りは日数がx2倍になる』と聞いた」

      ↓ 

・「ならば、自動車専用船も50日のx2倍で100日かかるということだね」 

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★ この記事は「自動車専用船の動静をレポートしながら、用語や数値を一般的なコンテナ船の混乱(例:欧州航路など)から借用してしまった」混同記事である可能性が高いと見ています。

★ 特に「完成車のコンテナ輸送」という、あり得ないBIZ形態を前提にしている(ように読める)点は、現場を知る人たちからすれば「この記事の信憑性はロジスティクスの基本において疑わしい」と判断されてしまう恐れがあると感じました。

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★ 尤も、 Alison Koo記者は、現場の「船種ごとの違い」よりも「戦争によるマクロな物流コスト増」というセンセーショナルな側面を優先して執筆したかったのかも知れません。

★ 一方、少々厳しいことを言えばですが、このような初歩的な混同を放置したことは、看過できない「情報のノイズ」とされてもおかしくないのではないかと…。

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★ ともあれ、本件に係る情報の整理をするべく、そして、この状況を可能な限り正しく把握し、且つ、議論の土台を揃えるための「記事内容の検証・訂正マトリックス」を以下のように作成してみました。ご参考まで

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★ この「50日→100日」という航海日数に関して、もう少し追記したいと思います。
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★ もし本当に100日間も船倉に車両を留め置けば、「塩害のリスク」「バッテリーの放電」、そして、何よりメーカーにとっての「キャッシュフロー(在庫金利)」が耐えられなくなる思っております。
★ 実際、PCCのオペレーションを知る人であればあるほど、100日の迂回オプションを選ぶ前に「出荷調整」または「揚地変更」を判断するような気がします。
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★ 今回の記事については「メディアの誤報」とまでは言いませんが、少なくとも「かなり誤解させる/ミスリードさせる」内容だったと受け止めています。
★ 最後になりましたが、上記マトリックスにおける論点整理が、業界紙の記事にいたずらに振り回されないためのフィルターとして機能することを願う次第です。
 
以上