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英Air Cargo News:2025年7月2日付け記事
(要旨)
1.中国の国家市場監督管理総局(SAMR:State Administration for Market Regulation)は、「全日本空輸(ANA)ホールディングス」が、「日本貨物航空(NCA)」を「日本郵船(NYK)グループ」から買収することを承認した。
→ 但し、「当該事業が、日中間の航空貨物市場における公正な競争の維持を約束すること」という条件付きだ。
2.ロイター通信は、次のように報じている。
→ その国家市場規制当局(SAMR)は「『東京成田空港(NRT)』および『大阪関西空港(KIX)』における貨物グランド・ハンドリングに関する既存合意は、承認の条件として履行されなければならない」と述べた。
3.この中国規制当局(SAMR)の承認は、一連の(承認プロセスに係る)遅延の中で、「克服すべき最後のハードル」となっていた。
→ 2023年3月に買収合意が初めて発表されて以降、本年2025年1月に「日本公正取引委員会(JFTC:Japan Fair Trade Commission)」による承認に続く流れの中で、最後の障害になっていたということだ。
4.本誌Air Cargo Newsは先週(6/27(金))、次のように報じた。
(a) ANAは当初、2023年10月1日に今回の買収に係る取引を完了させるつもりだった。
(b) 一方、競争規制当局の承認プロセスが完了するまでに(かなりの)時間を要してしまった。
→ そのため、ANAとしては、8月1日にNCAを買収する方向で話を進めることになった。
5.日本郵船(NYK)グループは今回、ボーイング747-8型貨物機を運航するNCAの売却を決めた。
→ この貨物航空会社(NCA)の運営コストが、継続的な負担となってきていることが理由だ。
6.そのNCAは現在、747-8型貨物機8機を運航している。
→ 一方、「ASL航空ベルギー(3V)」と「アトラス航空(5Y)」が運航する747-400型貨物機5機を保有している。
7.ANAは今回の取引が発表された時点で、次のように述べていた。
→ 今回の買収が、当社の日本を拠点とする「国際航空貨物ネットワーク」ならびに「製品およびサービス」を劇的に強化することになるだろう。
8.ANAは、「6機のボーイング767貨物機」と「2機のボーイング777貨物機」を運航している。
★ 今回の記事内容に関しては、今日(7/03(木))付けのDaily Cargo電子版が、「異常に?」詳しいです。。(笑)
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★ 記事の中でレポートされている貨物機の機種ですが、Daily Cargo電子版の記事によれば「ANAが今回NCAから継承するものを含め、比較的、機体年齢が若いフリート構成になっている」ことが指摘されています。
★ 特に、NCAが運航しているボーイング747-8型貨物機は「2012年から運用が開始されたばかり」とのことです。
★ この貨物機の新規発注については、「現状、航空機メーカーのデリバリー遅延が続いている」とのことで、航空貨物業界では「新造機の投入が思うに任せない」というジレンマに陥っている模様です。
★ そのため、結果的に、若い機体年齢がラインアップされた格好のANAフリートの企業価値が「マーケットで評価される材料になるのではないか」との見方もあるようです。
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★ ところで、今回の中国当局による買収承認のタイミングですが、個人的には少々気になっているのも事実です。
★ この買収によって、「ANAグループは、アジアの航空会社として最大規模の貨物機フリートを抱える」と、そのDaily Cargo電子版はレポートしています。
★ 一方で、この日本企業ANAに関連するニュースを、イギリスのAir Cargo Newsが「わざわざ」取り上げたのは、そのフリート規模だけではないような気もするのです。(勿論、それについて何も書かれていませんが。。)
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★ 本件に関しては、以前ここでご紹介したことがあります。
→ 2025年3月27日(木)配信「【ご参考情報】ANA:NCA買収を5月まで延期」
★ その時の記事内容を見直してみると、「ANAが成田空港に新しい貨物施設を開設する」とあり、その中で「定温施設の拡張」を挙げていました。
★ ANAは、この施策の主たる目的として「グランド・ハンドリングの業務効率の向上」を言っているのですが、それとは別に、具体策として「定温施設…云々」を挙げていました。
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★ 今回、中国の国家市場監督管理総局(SAMR)が、買収の承認に関する付帯条件として、「東京成田空港(NRT)および大阪関西空港(KIX)における貨物グランド・ハンドリングに関する既存合意は、承認の条件として履行されなければならない」としています。(2項)
★ つまり、この部分との読み合わせで、「既存合意と言うが、どういうことなのだろうか?」と。
★ まあ、普通に考えれば、「中国機を後回しにするな」でしょうか。
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★ 先だって(6/29(日))、中国政府は「日本産水産物の一部輸入を再開する」と発表しました。
★ 言うまでもなく、とりあえず10都県産の品目が適用除外されているとは言え、農水産物の空輸サービスが日中間の貿易取引にリンクしないなど、「絶対にあり得ない」。
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★ ここからは、あくまでも私見ですが、この輸入規制解禁のタイミングと、今回の買収承認が歩調を合わせていると感じているのは、自分1人ではないような気がします。
★ その際、「既存の合意」なるものが、成田(NRT)と関空(KIX)におけるグランド・サービスに対する「プラスの評価」として言及されているのか?、或いは、「マイナスの評価」として言及されているのか?――、それ次第で、他の主要空港(中部セントレア(NGO)、福岡(FUK)など)での動きに、様々な影響を及ぼすことになるのでは?との受け止めでおります。
★ 要は、「現行の日本側のハンドリングは素晴らしいので、引き続きそれを維持して欲しい」で終わればOKなのですが、「余計なことするな」的な物言いだと、かなり具合の悪い話ではないかと。(考え過ぎなんでしょうかね?)
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★ ANAの収益がコロナ禍に伴うパッセンジャー需要が激減した際、貨物輸送BIZが、同社のバランスシートを維持するポートフォリオ(リスク分散の手段)として機能したことが分かっています。
★ そのほか、Daily Cargo電子版では、「大型貨物輸送機を保有する(それも)日系のアジア最大フリートになることで、『有事対応』も視野に入ってくる」ことを示唆する記載もありました。
★ 寧ろ、こっちの方がよっぽど大事かも知れません。
★ ともあれ、今回の買収完了は、正確には8月1日(金)とのことですが、ANAの新体制下でのBIZ展開が注目されます。
以上