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米サプライチェーン・ダイブ:2025年10月15日付け記事
【記事のポイント】
1.海運関係者が「中国関連本船に対する米国の課徴金」と「紅海航路再開につながる可能性のある停戦合意」に直面する中、運賃が下落し(続け)ている。
2.米Freightosの週間レポート。
→ 米国輸入量の減少が、海上運賃への更なる下押し圧力になりつつある。
3.そのFreightos社のJudah Levine調査部長は、10月15日(水)付けの同社週次レポートで次のように記した。
① 海上運賃は2023年末以来の最低水準に下落。
② 紅海危機発生直前の水準に近づいている。
4.さらに上記レポートによると、
(a) 太平洋航路コンテナ運賃への下押し圧力は、貿易戦争関連の以下要因によって助長されている。
① 前倒し積み
② (船腹の)供給増加
(b) この航路の運賃は、前週比で▲8%下落した。
5.Levine調査部長の話。
(a) 米国の輸入量は2023年半ば以降で最低水準にある。
(b) この状況は12月まで減少が続くと予測される。
→ これが運賃に対して「更なる足かせ」を掛けている。
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【数字で見る:10月8日~15日までの海上運賃】
■ $1,431ドル
→ アジア~米国西岸のFEU当たり平均運賃(前週比▲8%減)
■ $3,015ドル
→ アジア~米国東岸のFEU当たり平均運賃(前週比▲8%減)
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【記事の深掘り】
1.海運関係者への荒波が押し寄せる中、海上運賃と輸入量が下落している。
→ この大荒れの海には、以下の事象も含まれている。
① 米国政府による中国関本船への課徴金の実施
② 紅海における緊張緩和の動き
【紅海危機の動向】
2.Freightos社のLevine調査部長の話。
(a) イスラエルとハマスの停戦に係る第1ステージが展開される中、紅海におけるコンテナ輸送復活への期待が高まっている。
(b) この水路(スエズ運河)では、長年にわたる地政学リスクに起因したスケジュールの混乱と混雑の時期を過ごしていた。
(c) 一方、今回の停戦によって、マーケットに「船腹の波が解き放たれる」ことが期待されている。
2.Levine調査部長の同社レポート内の更新情報として、次のように記している。
(a) 一部の船社は既に、スエズ運河経由のサービス増強に動き始めている。
(b) 但し、多くの船社は「十分長い期間での安定性および安全性が実証された後」になるまで、サービスを見送っている。
【中国関連本船に対する米国の港湾使用料】
3.Freightos社のLevine調査部長の話。(その2)
(a) 米国は火曜日(10/14)、中国関連の本船に対する寄港料を打ち出した。
(b)「米中両国間の貿易交渉で進展があった」との報道を受け、「課徴金が減額またはキャンセルされるだろう」と期待されていたにも関わらず、だ。
4.一部の船社は「追加コストを顧客に転嫁しない」方針を決定している。
5.例えば、MAERSKの北米契約商品管理責任者のAnders Sonesson氏は、9月に次のように語っている。
→ A.P. Moller - Maersk社は「中国建造船を他の航路に投入」しながら、コスト回避を優先する計画だ。
6.Freightos社のLevine調査部長は先週、次のようにレポートした。
(a) 他方、中国を拠点とする船社COSCOは、顧客に対して「サービス中断や追加料金の発生を見込む必要はない」と確約している。
(b) このような対応が取られている関係で、東回り太平洋航路の「貨物運賃」「運航」または「船腹」に対する影響は限定的かも知れない。
7.中国交通運輸部は10月14日(火)、次のように発表した。
(a) 中国も火曜日(10/14)から米国船舶に対し港湾使用料の課金を始めている。
(b) 今回の措置は、米国の船舶税への対抗措置となるものだ。
8. Levine調査部長 は、英Clarksons Research社のデータを引用しながら、このようにコメントしている。
(a) 中国の手数料は寄港の約5%に影響を与えるだろう。
(b) また、影響を受ける船社は本船ネットワークを調整して、リスク軽減を図ろうとする可能性が高い。
【その他の制裁】
9.金曜日(10/10)、米国はさらに次のように警告した。
→ 国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)の『ネット・ゼロの枠組み(NZF:Net-Zero Framework)』に賛成票を投じた国々に対し制裁を科す。
10.この国際海事機関(IMO)の取り組みは、外航海運業界の炭素排出量を削減するための「グローバル課税」となるものだ。
→ 米国が発動する可能性のある措置の一部には、その「ネット・ゼロの枠組み(NZF)支持国」が「所有」「運航」「船籍を置く」本船に対して、以下内容の賦課が含まれる。
① 乗組員のビザ制限
② 追加的港湾使用料
11.他方、米国通商代表部(USTR)の通知について。
(a) 米国は11月9日(日)から「中国関連の以下品目に対して100%の関税を課す」計画だ。
① 岸壁クレーン
② 荷役設備
(b) この関税は、以下品目にも適用予定だ。
① インターモーダル輸送のシャーシ
② シャーシ部品

★ 先ず、別信でもお伝えしているように、海上運賃のマーケットが下がり続けており、なかなか底値が見えてきません。
★ 昨日の記事では、英Drewry社WCIのデータがレポートされていました。
★ それによると、上海→L.Aは、それでも$2,176ドル(09-OCT時点)で、$2,000 ドル台をキープしていました。
→ 10/15(水)配信「【ご参考情報】コンテナ・スポット運賃:下落スピード緩む――、需要減退の兆し?」
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★ ですが、それから1週間後には、その$2,000ドル台を割り込んでしまい、何と(!)$1,431ドルになってしまったとあります。(【数字で見る:10月8日~15日までの海上運賃】)
★ 因みに、そのWCIの上海→N.Yは、$3,189ドル(同上)でした。
★ ですが、この記事によれば$3,015ドルとなっています。
★ $3,000ドルを切ってしまうのは「もはや時間の問題ではないか?」とも感じました。(【同上】)
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★ ところで、この記事では触れられていませんが、特にアジア~欧州航路の関係者が気にしている「欧州主要港におけるストライキの動向」についてです。
→ 同上
★ その記事の中では、今回のストライキが、低迷し続ける欧州向け航路の運賃マーケットに対する「希望の光」として、関係者の間では受け止められている――、このようなレポートになっていました。
★ ですが、今日付けのロードスター誌の別記事では「ストライキは終了する」となっていました。
https://theloadstar.com/antwerp-and-rotterdam-port-strikes-end-at-least-until-friday/
★ その記事を読む限り、まだ若干の紆余曲折は想定されるものの、今週金曜日(10/17)までには収束するとの話が進んでいるとのことです。
★ 特に、ROTTERDAM港のステべ作業のストライキについては、裁判所からの停止命令が発出されたとのことです。
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★ その記事によれば、組合側は争議を一時停止させつつ、交渉のテーブルに着く模様です。
★ その時の配信で申し上げたのですが、「ストライキほど気まぐれなものはない」ということでがあります。
★ これを以って「需給の引き締め」と考えるのは、正直「甘い」と思います。
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★ 今回の記事では、やはりと言うべきか、「紅海危機が終息する可能性」もレポートされています。(2項)
★ この紅海危機が解決すれば、「船腹の波が解き放たれる」とあるように、大量の本船がマーケットに出てくることが予想されます。
★ 一部の船社は、これを好機と捉えて、従前のスエズ運河サービスを復活させ、需要の多くを取り込む算段をしているようです。
★ 但し、需要それ自体が、期待したほどの伸びを示すかは、依然未知数です。
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★ イスラエルとハマスの停戦が完全に成立すれば、当然のことながら「復興需要」が期待されます。
★ 廃墟も同然のガザ地区を復興させるべく、莫大なマネーが動くのは必定です。
★ スエズ運河の復活に期待している関係者は、まさにそこを見逃さないとの理解です。
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★ その一方で、トランプ政権は、またしても「別なる制裁措置」を企てています。
★ 驚きなのは、国際海事機関(IMO)の「ネット・ゼロの枠組み(NZF:Net-Zero Framework)」に賛成票を投じた国々に対し制裁を科す――、これです。(10項)
★ 確認した訳ではありませんが、その内容からして、日本政府も賛成票を投じるのではないでしょうか…。
★ そうなると「ますます米国BIZがややこしいことに成りはしないか?」心配です。
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★ もう一つ驚きなのは、「米国の港湾設備は、かなりの中国製品で席巻されている」という実態です。(11項)
★ 中でも「岸壁クレーン」については、以前から言われていました。
★ 特にクレーン上部に搭載の「監視カメラ」が、単なる「監視」ではなく、「スパイ目的」で、中国にデータ送信されるリスクがあるという訳です。
★ このことが、米国議会の中で、かなり問題視されていたと記憶しています。
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★ このように目まぐるしく登場してくる様々なファクター(リスク)を横目で睨みながら、「2023年末以降で最低レベル」というマーケットがどう展開するか?――、注目していきたいと思います。
以上