Rengedouji1’s diary

グローバル・サプライチェーンをトレースするため、英字紙を(ひたすら)和訳し、サマリーします!

ポーランド/ベラルーシ国境が再開:サプライチェーン、地政学的な問題との戦い続く

著作権保護の観点から記事内容の取扱いにご注意賜りますようお願い申し上げます。

 

ロードスター誌:2025年9月29日付け記事

theloadstar.com

(要旨)

1.ポーランドベラルーシの国境が再開された。

(a) 中国と欧州を結ぶ鉄道貨物も通行可能となった。

(b) 一方、この閉鎖はまたしても「物流への政治的影響」をもたらすものとなった。

 

2.イスラエルのガザ攻撃で、今月イタリアの港湾作業員はイスラエル向け本船の荷役を拒否した。

(a) さらに、フーシ派による紅海閉鎖が発生している。

→ 中東地域全体の情勢悪化が懸念される状況。

(b) 一方、欧州では(安全保障上の)緊張感の高まりから、防衛費増額が進んでいる。

 

3.他方、この混乱は、コロナ禍による運賃高騰を受け、そうでなくとも壊滅的だったマーケットを目にしてきた物流業界にとって、ある種「恩恵」となるものだった。

 

4.スエズ運河の閉鎖は、依然として需要が低迷するマーケットにおける過剰船腹を緩和した。

→ 但し、本船は依然としてスエズ運河を使っていることは強調すべき点だ。

 

5.英国の市場調査会社Transport Intelligence社の報告書。

→「防衛支出がインフラ事業の積み重ねとなる中、雇用機会を後押しする可能性が出てきている」としている。

 

6.だが、こうした「免罪符」の代償は、予測可能性の喪失ということなのだ。

 

7.英国のセキュリティ対策企業Ambrey社のグローバル海事・リスク管理責任者Joshua Hutchinson氏は本誌ロードスターに対し、次のように語った。

(a) サプライチェーンは、今や自らの制御を遥かに超えた出来事に翻弄されている状況だ。

(b) 地政学が「貿易」と「貿易構造」の両方に、長い間見られなかった方法で影響を与えている。

(c) さらに、これらはサプライチェーン分野の領域外の事態だが、ガザとウクライナの両方で、結果として新たなルートが発展した。

 

8.これ(新たなルート)には、以下の事象が含まれる。

① コンテナ船が喜望峰を迂回するという「現在では当たり前になってしまった慣行」

② 中国~欧州間の鉄道貨物輸送サービスが「ロシア経由から離れる動き」

 

9.中国は、ロシアを迂回してカザフスタンを経由する「中欧回廊(カスピ海横断国際輸送路)」という鉄道貨物輸送ルートの主要提唱国の1つだ。

(a) それにも関わらず、毎年約€250億ユーロ相当の物品を、鉄道を使ってロシア経由で欧州に送り続けている。

(b) このことが(↑)、ポーランドベラルーシとの国境を閉鎖し、この貿易の流れを遮断した際に、北京政府が示した怒りの理由を説明している。

 

10.ポーランド当局は9月12日、ベラルーシとロシアの共同軍事演習に伴う安全保障上のリスクを挙げ、この(国境閉鎖に関する)決定を下した。

(a) その演習終了後には国境が再開される見通しを示している。

(b) 伝えられるところでは、「実際、中国とEUからの圧力で、先週約2週間ぶりに国境が再開された」模様だ。

 

11.だが、北京(中国)とブリュッセルEU)の両者は、ワルシャワポーランド)の決定に不満を抱いている。

→ 但し、後者は公には表明していないが。

 

12.この国境閉鎖は、世界貿易が「いかに軍事優先の在り方に翻弄されているか」を如実に示す事例だ。

★ ポーランドベラルーシの国境閉鎖に伴う、鉄道輸送の待機問題については、先日ご紹介した通りです。

→ 9/24配信「【ご参考情報】ポーランドベラルーシ国境閉鎖:航空運賃が急騰、サプライチェーンの混乱で」

★ この国境閉鎖が解かれた模様です。(1項)

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★ 記事が指摘している通りで、極めて政治的な側面の強い事象です。(同項(b))

★ 一方では、このような出来事は「地政学リスク」という言葉で説明されることが多いと思います。

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★ このことに関連して、記事では「予測可能性の喪失」という言葉を使っています。(6項)

★ つまり、「地政学リスク」とは、言い換えれば「人々の予測を不可能にする事象」ということだと理解しました。

★ 平時であれば、マーケットの趨勢を見ながらの積み上げで「予測可能」となるのに、この地政学リスクが絡んできた途端、そこでの作業はアッサリ否定されてしまうからです。

★ それが連続的に発生すればするほど、企業活動が困難になって当然です。

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★ この問題が、全世界的なサプライチェーンに大きな影響を与えることが、近年ますます顕著になっています。

★ 目の前の仕事に集中すれば良かった時代は、いよいよ遠くに離れつつある――、特にポーランドベラルーシと陸続きの欧州各国にとって「身近で切実な問題」であることは、もはや言うまでもありません。

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★ ここでは紹介していない関連記事が幾つかあるのですが、それらを見ながら共通して感じるメッセージは「明日は我が身ですよ」という警句です。

★ 日本でも、この地政学リスクに「直接的に晒される日」が来ない保証はありません。

★ 今は欧州サイドの出来事として捉えていますが、その日が近未来に訪れる可能性も、頭の片隅に置いておくことは相応の意味があるのではないでしょうか。

 

以上